動画学習は手軽に始められるのが魅力ですが、「ただ見ているだけで頭に入らない」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。実は、動画を見るだけの受け身の学習では、記憶への定着率は低いと言われています。せっかく時間を使うのに、それではもったいないですよね。
そこで注目したいのがアクティブラーニングという学習手法です。文部科学省も推進している「主体的・対話的で深い学び」の考え方を動画学習に取り入れることで、学んだ内容の定着率を大幅に高めることができます。
この記事では、動画学習にアクティブラーニングの手法を組み合わせた実践方法を、初心者にもわかりやすく解説していきます。

アクティブラーニングとは?動画学習に取り入れるべき理由
アクティブラーニングとは、受講者が能動的に学びに参加する学習法のことです。従来の「講義を聞くだけ」「動画を見るだけ」のインプット型学習に対して、自分で考え、手を動かし、アウトプットすることで理解を深めていくのが特徴です。
アメリカの教育学者エドガー・デールが提唱した「ラーニングピラミッド」によると、学習方法ごとの記憶定着率には大きな差があるとされています。
学習方法ごとの記憶定着率の目安(ラーニングピラミッド)
- 講義を聞く:約5%
- 読む:約10%
- 視聴覚(動画視聴):約20%
- デモンストレーション:約30%
- グループ討論:約50%
- 実践・体験する:約75%
- 他の人に教える:約90%
つまり、動画を見るだけでは約20%の定着率にとどまるところ、グループ討論や実践、人に教えるというアクティブラーニングの手法を加えることで、より記憶に残りやすくなると考えられています。なお、ラーニングピラミッドの数値は研究で厳密に確かめられたものではなく、あくまで目安として捉えるのがおすすめです。
動画学習の手軽さとアクティブラーニングの高い効果を組み合わせることで、効率的にスキルを身につけることが可能になります。
「なぜ思い出せないのか」「どう復習すれば残るのか」といった学び方そのものを扱った本も数多く出ています。手法を一つずつ試すより先に全体像をつかみたい方は、こうした一冊から入るという手もあります。
動画学習でアクティブラーニングを実践する5つの方法
ここからは、具体的な実践方法を5つ紹介します。すべてを一度にやる必要はなく、取り入れやすいものから始めてみてください。
方法1:動画を止めて自分で予測・考察する
動画の解説を聞く前に、自分なりの答えを考えてから視聴するのがおすすめです。たとえばプログラミング講座なら、コードの実行結果を予測してから解答を見ます。ビジネス講座なら、ケーススタディの結論を自分で考えてから講師の解説を聞きます。
この「予測→確認」のサイクルを回すことで、脳が活性化し、正解でも不正解でも記憶に残りやすくなります。

方法2:メモやノートを取りながら視聴する
ただ漫然と動画を見るのではなく、重要なポイントを自分の言葉でメモしながら視聴する方法です。手書きでもデジタルでも構いませんが、ポイントは「講師の言葉をそのまま書き写さない」ことです。
自分の言葉に置き換えて書くことで、内容を深く理解しようとする脳の働きが生まれます。コーネル式ノート術やマインドマップなど、自分に合った方法を見つけてみてください。
コーネル式のようにページを区切って使う書き方をするなら、罫線よりも方眼のノートのほうがレイアウトを組みやすくなります。図を書き足したいときにも扱いやすいので、1冊用意しておくとメモの形が安定します。
方法3:学んだ内容をSNSやブログでアウトプットする
動画で学んだ内容を、X(旧Twitter)やブログ、社内チャットなどで発信するのも効果的なアクティブラーニングです。「人に伝える」という意識を持つことで、理解があいまいな部分が浮き彫りになり、知識の整理が進みます。
最初は「#今日の学び」のようなハッシュタグで140字程度のまとめを投稿するだけでも十分です。
方法4:スタディグループを作って討論する
同じ動画講座を受講している仲間と、週1回でもいいのでオンラインで集まり、学んだ内容について話し合う方法です。Zoom、Discord、LINEグループなど、使い慣れたツールで気軽に始められます。
ラーニングピラミッドでも示されている通り、グループ討論は約50%の定着率が期待できる手法です。一人で学ぶよりもモチベーション維持の面でもメリットがあります。
方法5:学んだスキルを実際のプロジェクトで使う
これがもっとも効果の高いアクティブラーニングの方法です。動画で学んだプログラミング言語で小さなアプリを作ったり、マーケティングの知識を自分のSNS運用に活かしたりと、実践の場を設けましょう。
Udemyの講座であれば、講座内のハンズオン課題を最初から最後までやり切ることがおすすめです。Courseraの講座ではピアレビュー(受講者同士の相互評価)の仕組みが用意されているコースもあり、これも立派なアクティブラーニングの場となります。

動画学習プラットフォーム別のアクティブラーニング機能
主要な動画学習プラットフォームには、アクティブラーニングを促す機能が搭載されているものがあります。自分が使っているサービスの機能を活用しない手はありません。
プラットフォーム別のアクティブラーニング機能
- Udemy:セクション末の小テスト、コーディング演習、Q&Aフォーラム
- Coursera:ピアレビュー、ディスカッションフォーラム、ハンズオンプロジェクト
- Schoo:生放送中のリアルタイムコメント、タイムライン機能
- スタディサプリ:確認テスト、まとめテスト機能
- Progate:ブラウザ上でのコーディング実践
たとえばCourseraのピアレビューは、自分の課題を他の受講者に評価してもらい、同時に他の人の課題も評価するという仕組みです。「人に教える」のと同様の効果が期待できるため、定着率が高い手法として知られています。
ディスカッションやオンラインの勉強会に参加するようになると、声の聞き取りやすさが話の入りやすさを左右します。PC内蔵のマイクだと生活音を拾いやすいので、マイク付きのヘッドセットを用意しておくとやり取りに集中しやすくなります。
アクティブラーニングを習慣化するためのコツ
アクティブラーニングの方法がわかっても、継続できなければ意味がありません。ここでは習慣化のためのポイントを紹介します。
小さく始めて少しずつ増やす
最初から5つの方法をすべて実践しようとすると、負担が大きくて挫折しがちです。まずは「動画を見たら3行でまとめをメモする」など、5分以内でできることから始めるのがおすすめです。
学習のルーティンに組み込む
「動画を1本見る→メモを取る→SNSでアウトプット」という一連の流れを固定してしまうと、毎回判断に迷うことがなくなります。習慣化の科学では、新しい行動を既存の習慣にくっつけるのが効果的とされています。
完璧を目指さない
メモは走り書きでもよいですし、SNS投稿も短くてOKです。大切なのは「手を動かす・言葉にする」というアクション自体を繰り返すことです。質は後からついてきます。
アクティブラーニングで避けるべきNG行動
以下の行動はアクティブラーニングの効果を下げてしまうため、注意が必要です。
- 倍速で流し見して「終わった」と満足する
- 講師の言葉をそのままコピペしてメモとする
- ノートを取ることが目的になり、理解がおろそかになる
- アウトプットせずに次の動画に進んでしまう
- 復習のタイミングを決めず、見たきりにする
特に倍速視聴は効率的に見える一方、内容を咀嚼する時間がなくなってしまうリスクがあります。倍速で見る場合は、重要な箇所だけ等速に戻して一時停止しながら考える時間を取るのがよいでしょう。
止めて書く動作をラクにするには、机の上の配置も効いてきます。スマホやタブレットを手に持ったままだとメモが取りづらいので、画面を立てられるスタンドを置いて「見る側」と「書く側」を分けている人もいます。

動画学習×アクティブラーニングの成功パターン
パターン1:プログラミング学習の場合
UdemyやProgateでプログラミングの動画を視聴した後、すぐに自分でコードを書いてみるのが効果的です。講座内のハンズオン課題に取り組むだけでなく、学んだ文法や技術を使って自分だけのオリジナルプログラムを作ってみましょう。エラーが出ても、その解決プロセス自体がアクティブラーニングになります。
パターン2:ビジネススキル学習の場合
SchooやUdemyのビジネス講座を視聴したら、学んだフレームワーク(SWOT分析、3C分析など)を自分の仕事に当てはめて分析してみてください。実際の業務課題に適用することで、「知っている」を「使える」に変えることができます。
パターン3:語学学習の場合
YouTube等の英語学習チャンネルを見た後、シャドーイング(音声を追いかけて発話する)練習を行いましょう。さらに学んだフレーズを使って英語日記を書いたり、オンライン英会話で実践すると、リスニング・スピーキング両方の力がつきます。
シャドーイングは同じ音声を何度も追いかける練習なので、スクリプトが手元にあるほうが続けやすくなります。音声とテキストがセットになった教材も市販されているので、動画と組み合わせて使ってみるのも一つの方法です。
よくある質問(Q&A)
Q. アクティブラーニングはひとりでもできますか?
できます。メモを取る、自分の言葉でまとめる、SNSで発信するなど、一人で実践できる方法はたくさんあります。もちろんスタディグループがあればさらに効果は高まりますが、まずは一人でできることから始めてみてください。
Q. どのくらいの頻度でアウトプットすればいいですか?
理想は動画を見るたびに何らかのアウトプットをすることですが、最低でも週に2~3回はアウトプットの時間を確保したいところです。動画視聴時間の3割をアウトプットに充てるのを目安にするとバランスがよいでしょう。
Q. アクティブラーニングにおすすめのツールはありますか?
ノート系ツールならNotion、Obsidian、手書き派ならGoodNotesがあります。SNSでのアウトプットにはX(旧Twitter)やnoteがおすすめです。マインドマップを作りたい場合はMindMeisterやXMindが使いやすいでしょう。
Q. 子供にアクティブラーニングを取り入れるにはどうすればいいですか?
お子さまの場合は「見た内容を親に教える」のがもっとも手軽で効果的な方法です。「今日の動画で何を学んだか教えて」と声をかけるだけで、ラーニングピラミッドの「他の人に教える」を自然に実践できます。

まとめ
動画学習にアクティブラーニングを取り入れることで、受け身の視聴から脱却し、学んだ内容を着実に自分のものにすることができます。
ポイントは「予測→視聴→メモ→アウトプット→実践」のサイクルを回すことです。すべてを完璧にやろうとせず、一時停止してメモを取ることから始めてみてください。小さなアクションの積み重ねが、学習効果を大きく変えてくれます。
アクティブラーニングについてより詳しく知りたい方は、エプソンのアクティブラーニング解説ページや、ClassPad.netのアクティブラーニング実践ガイド、ShareWisのアクティブラーニング導入解説も参考にしてみてください。


